2014年5月27日火曜日

安全後進国=(1):崩れそうな校舎で学ぶ韓国の子どもたち:『安全はパクれない!』

_



 「ウソだろう! 素直には信じられない」
 学校だよ、学校。
 子どもの通う学校だよ。
 父兄はこれまで何も言わなかったのか。
 メデイアは報道しなかったのか。 
 どうも、わからない。
 『安全はパクれない』
というわけでもあるまい!


朝鮮日報 記事入力 : 2014/05/27 11:04
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/05/27/2014052701322.html

安全後進国:崩れそうな校舎で学ぶ韓国の子どもたち
【特集】安全後進国
「走ると崩れそう」、体育の授業ができない学校も

 旅客船「セウォル号」が沈没してから2週間ほどたった29日、ソウル・江北地区にあるA中学校の5階。
 2年生の教室に入り、教壇の上から床を見ると一瞬、めまいを感じた。
教室の出入口から窓側に向かって床が高くなっており、傾きが感じられるほどだった。
 学校関係者は「床を水ぶきするたびに水が廊下側に流れ、たまってしまう」と話した。
 一緒に来た施設安全専門家は「工事の最初段階で基礎部分を水平にしないまま進めたためだろう」と指摘した。

 1964年に鉄筋コンクリートで建てられたこの建物。
 教室と廊下のひび割れや剥がれたペンキの程度はあらためて言うまでもないほどひどい。
 教室の床は崩れた歩道のブロックのようにあちこちくぼんでいた。
 大人の指が半分ぐらい入る深さなので、ヒールの高い靴を履いている女性はおちおち歩いていられないだろう。
 学校側は
 「生徒たちには教室中では絶対に走らず、いつも気を付けるよう呼び掛けている」
と話した。
 この校舎は2008年の安全性評価で補修・補強が至急必要だと判定され「災害危険管理施設」に指定されたが、いまだに補修・補強工事ができていない。
 その間にも壁の亀裂はいっそうひどくなり、コンクリート強度も落ちていることが昨年の安全性評価で確認された。
 この学校より3年以上前に建てられたソウル市麻浦区内の麻浦マンションは既に20年以上前に撤去され、建て直されている。

 セウォル号沈没の悲劇が今も続いている中、災害危険施設と判定された全国の学校校舎・施設133棟で児童・生徒たちは今も授業を受けている。子どもたちはいつ崩れてもおかしくない安全の死角地帯で毎日を過ごしているのだ。

■災害危険膨らむ学校施設

 同じ日に訪れたソウル・江北のB小学校も、建物4棟のうち3棟が安全性評価でD判定を受けた災害危険施設だ。

 1975年に完工したソウル駅の高架道路などD判定を受けた構造物は判定から1年以内に撤去されているケースが多い。
 また、マンションがD判定を受ければ普通、建て直しの手続きに入る。
 しかし、学校については「近所に住む児童・生徒を遠くの別の学校に割り当てるのは難しい」という理由などで、D判定を受けても放置されるケースが多かった。
 このため、学校関係者の中には「いっそE判定を受けて使用停止になった方が気が楽だ」という人もいる。

 2008年D判定を受けたB小学校は先日、教育当局に「状態がさらに悪化しているようだ」と安全性評価を要求したが「もう少し待て」という回答が返ってくるばかりだ。
 体育の時間に主に使われていた校舎3階の講堂は無用の長物になっている。
 「中で走ったら崩れてしまうのでは」
という心配から、雨の日でも体育の授業をここでは行わない。
 学校側は2階の図書館に新刊を入れるのも気が気でないという。
 学校関係者は
 「読書教育を強調し、毎年2000万ウォン(約200万円)相当の本を買っていたが、今はこの建物では本の重さに耐えられそうにない。本を書架に入れるたびに薄氷を踏む思いだ」
と話した。

 教育部の集計によると、安全性評価でD 判定・E判定を受け、災害危険施設とされた全国の小中高の建物は昨年の時点で133棟に上るという。
 最近は使用中止や撤去準備が続いているが、ほとんどの建物は予算を確保できず使われ続けている。

 ソウル科学技術大学安全工学科のキム・チャンオ教授は
 「最近のように異常気象が顕著になると、自然災害の可能性も高まる。
 学校も例外ではない。体育館などの付帯施設が特に危険だ」
と指摘した。

 ソウル市内にある女子高の体育館も5年以上前に安全性評価でD判定を受けた災害危険施設だが、最近まで生徒がバスケットボールやバドミントンをしていた。
 ところが、セウォル号が沈没したのを受けて教育当局が遅ればせながら「使用禁止」としたため、今では立入禁止となっている。
 教育界関係者は
 「あんな危険な体育館で今まで事故がなかったのが奇跡だ」
と話した。

■無償福祉で後回しにされた学校の安全

 校舎の危険性が最も深刻なのはソウルだ。
 ソウルには1960-70年代の産業化時代に一気に人口が流入し、そのころ学校が多数建設されたためだ。
 ソウル市内の校舎数は合計3451棟。
 4棟に1棟が80年以前に建てられた建物だ。
 70年以前に建てられたものも332棟に達する。
 昨年3月現在で災害危険施設に指定された校舎・施設はソウルが33棟で最も多かった。

 江南大学都市工学科のキム・グンヨン教授は
 「安全性評価でD判定やE判定を受けた校舎はとても危険な状態だ。
 古い建物は耐震設計でなく、階数を増やすなどの改築により構造変更されているケースも多い」
と指摘した。

 校舎の安全性がこのように後回しにされているのはなぜだろうか。
 私立校の場合、教育庁から予算支援を受けていても工事費の一部は学校側が負担しなければならないため、財政状況が厳しい一部の私立校では古い建物を修理したくてもできないのが現実だ。

 さらに、2011年に無償給食が本格的に実施されるようになって以降、福祉予算が雪だるま式に増えているため、校舎の安全性に関する政策優先順位は下がってしまった。
 地方議会では議員たちが自分の選挙区に手柄をアピールできる予算ばかり編成し、校舎・施設の安全性については依然として眼中にない。

 ソウルの場合、2010年より前は毎年約4600億ウォン(約460億円)が校舎・施設の改修・補修に使われていた。
 ところが、この予算額は11年には半分以下の1805億ウォン(約180億円)に減少、今年は4年前の5分の1にも満たない801億ウォン(約80億円)=本予算=にすぎない。
 教育庁総予算に占める割合は6年間で9.6%から1.1%へと急減している。

 ソウル市教育庁関係者は
 「教育庁が組んだ予算7兆4390億ウォン(約7440億円)のうち、95%は無償給食や人件費などの固定経費で、実際に使える財源は3600億ウォン(約360億円)にすぎない。
 こうした構造では以前のように校舎・施設の改善予算を組むのが難しい」
と話した。

 これを受けて、全国の市・道教育庁は政府に対し、教育環境改善特別会計の復活を要求する案を話し合っている。
 ソウル市の文竜鱗(ムン・ヨンリン)教育監(教育長に相当)は先月29日、教育部に対して教育環境改善特別会計の復活を依頼した。
 教育環境改善特別会計は小中高の古い校舎・施設を修理・改善するため1990年-92年と96年-2000年に一時的に設けられたことがある。
 しかし、教育庁の思い通り予算を組むには、政府の協力や市議会の同意が必要だ。

 専門家たちは、全国2万カ所の幼稚園・小中高の全校舎・施設を災害の危険から守るには、少なくとも15兆-20兆ウォン(約1兆5000万-2兆円)を集中的に投入する必要があると見ている。
 ある専門家は
 「校舎・施設が安全性評価でD判定を受けたら直ちに使用中止命令を下すよう規制を強化すべきだ」
と指摘した。

 校舎・施設などの教育施設は必要な時に補修・補強工事をしないと急速に老朽化が進み、引き延ばせば引き延ばすほど将来の負担が大きくなる。
 改修・補修をせずに事故が発生すれば、その社会的損失は金額に換算できないのだ。



朝鮮日報 記事入力 : 2014/05/27 09:01
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/05/27/2014052700638.html

【社説】旅客船沈没事故に何も学ばない韓国社会

 26日午前9時ごろ、京畿道高陽市のバスターミナル「高陽総合ターミナル」地下1階で火災が発生し、6人が死亡、40人以上が重軽傷を負った。
 スプリンクラーが作動したため、火災の発生から27分後に火の手は消し止められたが、有毒ガスがエスカレーターなどを通じて建物の1階と2階にまで一気に広がり、死傷者の数は予想以上に増えた。
 火災が発生した当時、地下1階の飲食店街のある店でオープンを前に内装工事が行われていたが、その溶接作業中に発生した火花が資材に燃え移ったことが火災の原因とみられている。

 現場の高陽総合ターミナルは地下5階、地上7階となっており、地下2階には大型スーパー、地上5階から7階には1200席規模の映画館があり、そのほかさまざまな店舗やオフィス、バスターミナルの待合室や切符売り場などもある。
 火災発生当時は工事が行われていたため、エスカレーター前に設置されていた防炎カーテンは一部が取り外されていたという。
 工事の際に防炎カーテンを取り外すのであれば、当然これに代わる何らかの措置を取っておくべきだった。

 溶接作業中に火花が飛んで資材に燃え移り、これが原因で発生する火災は、韓国国内だけで毎年数百件に達している。
 2008年12月には京畿道利川市の西利川物流センターで同じ原因の火災が発生し、8人が死亡、4人が負傷した。
 労働災害防止のための法令には、通気性や換気に問題がある場所で溶接作業を行う際には、火花が飛び散るのを防ぐカバーや防火布を設置するよう定められている。
 また作業現場周辺に化学物質がないか確認することや、作業中には引火性の強い物質の濃度を随時測定すること、さらにこれが一定基準を超えれば作業を中断して換気を行うことなども定められている。
 ところが作業現場ではこれらの規定が守られないケースが非常に多い。
 先進国では溶接など危険を伴う作業を行う際には、安全対策について前もって消防署などに報告し、承認を受けなければならないことになっている。

 今回の事故原因や現場での状況が明らかになるに従い、韓国社会における安全に対する意識は旅客船「セウォル号」沈没事故前と何ら変わっていないことがあらためて分かった。
 避難経路が迷路のように複雑な映画館では、「どうか火災だけは発生しないでほしい」と祈るような思いで映画を見ている人も多いのではないか。
 政府が安全関連の部処(省庁)を立ち上げ、官フィア(官僚とマフィアを合わせた造語)集団と業者との癒着をなくしさえすれば、大韓民国が直ちに安全な国になるわけではない。
 現場で安全を無視する価値観や雰囲気が変わらない限り、いつどこでいかなる惨事が起こるか分からないのだ。
 韓国社会では今なお常に緊張しながら生活するしかないようだ。






_