2014年5月23日金曜日

韓国の威信、地におちる-(23):「死に体」政権のあがき、力量試される組織再編

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朝鮮日報 記事入力 : 2014/05/23 10:15
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/05/23/2014052301043.html

【社説】側近更迭、政権の力量試される組織再編

 朴槿恵(パク・クンへ)大統領は22日、韓国の情報機関である国家情報院(国情院)の南在俊(ナム・ジェジュン)院長と大統領府の金章洙(キム・ジャンス)国家安保室長の辞表を受理した。
 外交・安全保障分野で大きな役割を担う2人が同時に辞任することで、今後はこの分野の全面的な見直しが避けられなくなった。

 南院長と金室長はいずれも陸軍士官学校出身の元将校(四つ星)で、朴大統領に対しては大統領候補だった時からさまざまな支援を行ってきた。
 2人に対する朴大統領の信頼も厚かった。
 しかし南院長は国情院が職員を使ってインターネット上に虚偽の書き込みを行った問題や、ソウル市職員によるスパイ疑惑での証拠捏造(ねつぞう)などが相次いで発覚したことで、政治面で苦境に立たされていた。
 朴大統領は今年4月、検察が国情院による証拠捏造が事実であると結論付けた際、この問題で国民に謝罪したが、南院長は続投させた。今から考えると朴大統領はそのときに、南院長に対しても責任を追及すべきだったのかもしれない
 しかし最終的には旅客船「セウォル号」沈没事故をきっかけに、相次ぐ人事面での刷新要求に押される形で、今回南院長を更迭するような形になってしまった。

 金室長はセウォル号沈没事故発生直後
 「大統領府は事故や災害対応のコントロールタワーではない」
と発言したことが問題となった。
 実際に大統領府は金室長の発言通り、事故・災害対応でそのような役割を果たす立場ではないのかもしれない。
 しかし事故直後の国全体が慌ただしい雰囲気にある中、あえてそのような発言を行うことで、遺族や国民の神経を逆なでする必要などなかったのも事実だ。

 今この国を取り巻く国際情勢や外交・安全保障環境を見ると、一瞬たりとも油断できないほど緊迫した状況にある。
 このような時期に、大統領の信頼が非常に厚い情報担当のトップと安全保障分野の重要人物が、本来の業務とはほとんど関係のない疑惑や失言で同時に辞任するという事態が発生した。
 なぜこのような状況を招かねばならなかったのか、朴大統領は自らを深く振り返る必要があるだろう。
 いずれにしても朴大統領は早急に後任を指名し、情報収集と安全保障という二つの重要分野で新たなチームを立ち上げなければならない。
 その構成や顔触れはこの両分野における朴大統領の力量を試す大きな関門になるだろう。 
ただし第1期の内閣でそうだったように、特定分野の出身者ばかりが政府の要職を占めるようになっては困る。
 とりわけ国の運命を左右する外交・安全保障分野では、外交、統一、国防など各分野の専門家が互いに意見をぶつけ合い、その一方で協力し合えるような体制を築かねばならない。



朝鮮日報 記事入力 : 2014/05/23 10:18
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/05/23/2014052301073.html

朴大統領、国情院長と安保室長を更迭

 朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は22日、南在俊(ナム・ジェジュン)国家情報院(国情院)長と大統領府の金章洙(キム・ジャンス)国家安保室長を更迭した。

 大統領府の閔庚旭(ミン・ギョンウク)報道官はこの日、首相候補として安大煕(アン・デヒ)元大法院(日本の最高裁判所に相当)判事を内定したことを発表する隻で
 「朴大統領はまた、南在俊・国情院長と金章洙・国家安保室長の辞表を受理した。
 後任については近日中に発表する」
と語った。
 これにより、朴政権の安全保障や国防に関する2人の「司令塔」が同時に交代することとなった。
 大統領府の関係者は
 「旅客船『セウォル号』の惨事をめぐり、政府が責任ある姿勢を示すため、朴大統領が最も信頼してきた参謀たちを交代させることにした」
と話した。

 両氏の更迭により、今後さらに外交・安全保障に関する組織の再編が行われるとみられる。



朝鮮日報 記事入力 : 2014/05/23 10:17
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/05/23/2014052301066.html

側近更迭、世論悪化で朴大統領が苦渋の決断
野党の要求受け入れ

 22日に辞任した国家情報院の南在俊(ナム・ジェジュン)前院長と大統領府の金章洙(キム・ジャンス)前国家安保室長は、これまで朴槿恵(パク・クンヘ)政権の対北朝鮮安保政策で方向性を決定する主軸となってきた。
 二人に対する朴大統領の信頼は非常に厚かったことが知られている。
 しかし、旅客船「セウォル号」沈没事故後、世間では二人への批判が高まって野党の攻勢が続き、結局は最も信頼していた安保分野の中核二人を切り捨てることになった。政府関係者は「政権にとって負担になるほど国民世論が悪化していることを考慮し、『泣いて馬謖(ばしょく)を斬(き)る』心境で更迭したものだ」としている。

■安保司令塔を斬る

 南前院長の辞任は、2012年の大統領選挙時に起こった「国家情報院書き込み事件」と、今年2月に世間を騒がせた「ソウル市職員スパイ疑惑事件」が根本的な原因だが、セウォル号事故以降、高まっている人事刷新に対する世論も影響しているものとみられる。
 与党関係者は
 「南前院長に対する朴大統領の信頼が変わったわけではないが、野党が南前院長を人事刷新の中心的なターゲットに指定したのが決定的な要因になった」
と話す。
 今回のセウォル号事故発生直後、国家情報院が情報対応システムの問題点を露呈したことも要因だったとされる。

 南前院長は朴政権の外交安保関係者の中で最も強硬派とみられてきた。
 昨年末には国家情報院の忘年会で
 「2015年は南北統一のためにみんな一緒に死のう」
と発言したという。
 このため、
 「北朝鮮の崩壊を誘導している」
 「吸収統一論者」
などと批判され、絶えず野党のターゲットにされてきた。
 国家情報院のある関係者は
 「南前院長は在任中に統一の基盤を築こうとしたが、前政権で起こった事件などに足を引っ張られて実現できなかった」
と話した。

 金前室長の辞任は失言による偶発的な側面が強い。
 金前室長はセウォル号事故直後、「国家安保室はセウォル号の司令塔ではない」と発言、無責任だと批判された。
 これが朴大統領や大統領府に対する批判へと広がり、大きな精神的負担を感じていたという。 
金前室長は最近、周囲に「虚心になった」とよく漏らしていたとのことだ。

 ある政府高官は
 「南前院長と金前室長は大統領府で行われる国家安保政策調整会議で最も多く発言し、会議の方向性を事実上主導してきた。
 朴政権の外交安保司令塔二人が同時にいなくなった」
と嘆いた。

■北朝鮮政策の基調に大きな変化はなし

 二人は国防部(省に相当)の金寛鎮(キム・グァンジン)長官と共に「軍出身外交安保トリオ」と呼ばれてきた。このため、
 「二人の辞任は外交安保分野における軍出身者の勢力弱化や政策基調の変化につながるのではないか」
という見方もある。 
 対北朝鮮強硬路線から融和論へと若干の調整があるかもしれないというわけだ。

 これに対し、政府関係者は
 「もし後任人事で国家安保室長に軍出身者ではなく外交・統一分野の人物や外部専門家が来たら、政策基調変化のシグナルと見てもいい。
 現時点では政府の政策方向が変わる可能性は高くない」
と述べた。
 二人の辞任は政策的失策の責任を問われたというよりも、組織の問題や失言などに触発された面が大きいためだ。
 外交安保政策の方向性について、朴大統領の考えも大きく変わらないという。

 一部には「金寛鎮国防長官など軍出身者が再び国家安保室長を務めるかもしれない」という見方も出ている。
 金長官に打診したが固辞されたという話もある。
 それに加え尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官や柳吉在(リュ・ギルジェ)統一部長官が留任するなら、朴政権の安保政策基調は当分の間、そのまま維持されると予想される。

 大統領府関係者は
 「最近の国家情報院第2次長(キム・スミン元検事長)や大統領府民政分野人事で保守系の人物が任命され、大統領府の金淇春(キム・ギチュン)秘書室長が留任したのを見ると、政策基調が変化する可能性は小さいだろう」
と語った。
 ただ、二人の辞任後は対北朝鮮政策での強硬発言や強硬対応は若干減るかもしれない。